明日香村の家
30代のご夫婦が明日香村に移住して、農業を始めるための家です。
全村が歴史的風土保存地域に指定されているため、瓦屋根や漆喰など伝統建築の材料を
使う必要がありました。
瓦や土壁が必要であり、憧れもあるが予算が限られていること。
古材を使ってみたい、薪ボイラーを使いたい、自分たちで壁を塗りたいなどやりたい事は
沢山あるが付き合って貰えるのかどうかと言うこと。
雑誌を見て、事務所においでになりました。
『色んな試みを面白がってくれる人だ』と確信して『チャクラが開いた』そうです。
予算を押さえるため、業種を絞りました。
壁は外壁も内壁もすべて漆喰としました。建築主のご家族やお友達、設計者の知り合いなど毎週末荒壁に取り組んだことで左官費用は半分程度に収めることができました。
床は杉の無垢板(厚み30ミリ)とすることで根太や合板のないシンプルな構造です。
2階の床が1階の天井です。
着工した時期は農業の閑散期で時間もあったので、自分たちで出来る事はやりたいと思っていました。
設計の先生からすれば工務店に任せてしませば簡単なはずですが、竹や土の調達、古い建具を見に行く、
毎週末の左官作業など 面白がって付き合ってくれました。
予算もおさまり、思い通りの家づくりができました。これからも家を育てていこうと思います。
玄関を入ると、左が簾戸の靴箱。正面がリビングへの入り口です。
京町屋では夏になると居室の建具をすだれのような『簾戸(すど)』に入れ替えるのですが
通気が良いので靴箱に最適です。建具に合わせて箱を作って貰いました。
リビングから玄関(左の戸)と和室の戸をみる。
友人から譲って貰ったものや、京都の古建具屋で求めたもの。
建具の下が色が違うのは少し継ぎ足して背を高くしたからです。
洗面脱衣室の扉にも簾戸を採用。
夜、明かりをつけると透けるので和紙でも貼りましょうか、と工夫するのも楽しいものです。
2階主寝室。
こちらの襖も真ん中の障子部分を簾に交換できるものです。
古い建具は作りが凝っていて面白いものが多い割に安価なので工夫次第で新築でも楽しめます。
2階フリースペース
子供さんが大きくなったら半分に分けて使えるように入り口を二つにしています。
高台から明日香村を一望するこの家で一番の特等席。壁塗り作業中も景色に随分癒されました。
同じくフリースペース
正面の窓からは下のリビングの吹き抜けが覗けます。
2階にいても1階の気配を感じる事ができます。
おまけ 皆で壁塗りをしました。
昔の農村では村中の人が集まって子供も一緒に壁をつけるのが当たり前だったそうです。
建築主の息子さんも奮闘しました。